MULTI-WAY PICCOLO SNARE | comino Records
upcoming !
 

MULTI-WAY PICCOLO SNARE

さて、久々に機材ネタである。 実は先月中旬に購入していたのではあるが、購入後大きなライブイベントがあったので、約1ヶ月遅れでのアップになってしまった。
今回購入したのは Pearl 社製の『MN1235S/CH』というスネアドラムである。 本来このスネアドラムは練習用という位置づけの楽器であり、最も廉価な価格帯の製品である。 しかし『MULTI-WAY PICCOLO SNARE』という少し変わったコンセプトを持ち合わせており、だいぶ前から気になっていた楽器なんである。
そんなワケで、結構前からヤフオクや楽天などで価格動向を調査していたのであるが、とあるウェブショップのバーゲンで投げ売り状態になっているのを先月中旬に発見。 しかも、ショップオリジナルの “特別仕様” に改造が施されているものであった。
定価はあって無いようなもんだと思うが(『MN1235S/CH』という型番で検索すれば、だいたいの相場は判ると思うが)、“特別仕様で10k円 という金額は破格だったと思う。 というか、なんの改造も施されていない “標準仕様” でも10k円というのは現時点での最安値である。
廉価な楽器、特にドラムという楽器は構造上非常にシンプルな楽器であるためローエンドの製品は『それなりの音』しかしないというのが定説ではあるが、この金額であれば失敗したとしてもさほど後悔はない。 バーゲンということもあり “残り2台というキャプションにも背中を押され てしまい、思わず ポチッ としてしまったのである。
注文後、4営業日ほどで到着。 予想通りサイズは小さめではあるが、思ったよりも重量があった。 さて早速 “開封の儀” である。
廉価な製品ではあるが、一応ソフトケース付き。 段ボールの中にはソフトケースに収納された状態で、ビニール袋に入れられ、干渉材により丁寧に梱包されていた。 しかし、金額が金額だけに ソフトケースは予想以上にチープ である。
早速ソフトケースからブツを取り出す。 さすがに一流ドラムメーカーである Pearl 社の製品だけに、楽器そのものは、ハードウェア(金属部品)などの作りも含めて、それほど悪くはない。
カラーは『シルバースパークル』。 “カバリング仕上げ” と呼ばれる、樹脂のシートで木製シェル(ドラムの胴の部分)をくるんだ仕上げある。
80年代までは “塗装仕上げ” が高級品とされていた時期もあるのだが、このカバリング仕上げも “木製シェルの通気性” という点では塗りよりも優れているとされ、長く演奏していると音が良くなる(いわゆる “枯れた音” になる)ということから、近年では見直されているのである。 もっともこれは、メイプルやカバなど、キチンとした材を使用して作られた楽器でのハナシだとは思うが…(この製品の材は不明。 価格から考えてもラワンか何か であろう)
さて、購入した『MN1235S/CH』は “ピッコロ・スネア” という名前の通り、小ぶりなスネアドラムである。 このピッコロ・スネアという種類のドラムは、おおむね 『胴が極端に薄いスネアドラム』 と 『胴の口径が小さいスネアドラム』 という2種類に分かれる。 本器の場合、口径が12インチであり 『胴の口径が小さいスネアドラム』 に属する。 まぁ、口径が小さい分、胴の厚みも結構薄いのはであるが。
ドラマーであれば判ると思うが、軽音楽で標準的に使用されているスネアドラムの口径は14インチである。 これに対して12インチというのは結構小さい。 そんなワケで、見た目はミニチュアっぽくて何となくかわいらしい(上の写真は筆者所有の標準的な14インチスネアドラムであるラディック・アクロライトとの比較である)。
また本器は 『MULTI-WAY PICCOLO』 という名称から判るように、上写真のようなパッドが3枚付属している(左から “フェルトパッド”、“ラバーパッド”、 “ウッドパネル” )。 この3枚を下図のようにスネア内部にセットすると、消音効果が得られ、リアルなタッチの練習台としても活用することが出来るのである。
基本的にはスネアドラムなので、スナッピー(響き線)が付いているから練習台と言えども割合ちゃんとしたスネアサウンドが得られる。 スナッピーをOFFにすれば、さらに消音効果の高い練習台としても使用できる(ラバーパッドをスネアヘッドの上に置くことでさらに消音効果の高い練習台になるらしい)。
実際に消音した状態で試奏してみると思ったよりも音量は大きく、キチンと胴鳴りがするので、ポコポコとした感じの音がする。 とはいえ、スナッピーサウンドも得られるので、本来退屈なドラムの基本練習も少しは楽しくなるかもしれない(と思う(汗))。
もちろん、これらのパッドを取り外せば、小口径ピッコロスネアとして演奏用としても使用できるというスグレモノなのである。 今のところスタジオに持っていったことがないので、音量、音質に関してはなんとも言えないが、自宅で少し試奏した感じでは思ったよりも良い音がするように思われる。 もっとも腕前の方が支配的だと思うが(汗)。
さて、ここまでは本器の標準機能である。 冒頭に記したとおり、今回購入したものは ショップオリジナルの特別仕様の楽器 である。 まずは以下の写真を見ていただきたい。
なんと、本器のシェル横には上写真のように標準ジャックが装備されているのである。 実はこれ、本器に内蔵されたピックアップからアンプに接続することにより “エレキ・ドラム” としても使用できるように改造された特別仕様なのである。
しかも、このピックアップは、いわゆる “トリガー” として機能するものではなく、音そのものをピックアップ する、むしろ性質としてはマイクに近いものなのである。 思いっきりアナログなんである。
従って、ピックアップは下写真のようにバターサイド(打面=表側)とスナッピーサイド(裏面)にそれぞれ取り付けられている。
ここからの説明はやや専門的になってしまうが、いわゆるエレクトリックドラム(通称 “エレドラ” )に取り付けられているピックアップは “打った強度” を電気信号として検出するためのセンサーであり、この電気信号により外部に用意した “音源” を発音することで演奏する。 古くはシモンズ社の六角形のエレドラ(SDS-7、SDS-9などが有名…実は筆者も所有していた)から、最近では Roland 社の V-Drums (実は筆者も所有している)なども、電気信号の処理方法こそ違うものの、基本的な原理は同じなのである。
一方、本器に取り付けられているのは “音として検出” するピックアップである。 むしろエレクトリックギターのピックアップや、ローズピアノやウーリツァピアノのピックアップに近い。 性格としてはマイクに近いと記したのはこの為である。 このため、あえて “エレドラ” ではなく “エレキ・ドラムと呼称 しているワケである。
上の写真はピックアップ部を拡大して撮影したものである。 このピックアップは『Highleadsピックアップマイク』と呼ばれるものだ。 実はこれ、日本の方が開発・製造されてる、割合最近の製品なのである。
表面の金属版=『共振磁性体』 がドラムヘッドに圧接されており、打面の振動と同じように動く。 この動きから発生する電磁誘導を “音” として検出するのである。 いわゆる 『コンタクトピックアップ』 の一種であり、誤解を承知で言ってしまえばダイナミックマイクロフォンとほぼ同じ原理である。 (しかし、一般にコンタクトマイクはエレクトレットコンデンサーマイクの動作原理に近い)
では、どんな音がするのか?
興味のある方はメーカのウェブページで視聴できるのでソチラを参照していただきたい。 正直自分の感想は…、開発された方には大変失礼な表現かもしれないが 「水中マイクみたいな、詰まった感じの音」 というものである(ゴメンナサイ)。 もっともこのピックアップは適切な音質調整をしてから使用する事を前提として設計されているらしく、“素の音” をそのまま評価してはいけないのかもしれない。
しかし、エレクトリックギターなどで使用するエフェクタ等を接続して “飛び道具的な楽器” として使用するには、かなりの効果を発揮すると思う。 従来の “センサー型” のエレドラとは違い、演奏性も良いし(というかドラムそのものだし)、ダイナミックレンジも広いからである。
とは言うものの、今回この楽器を購入したのは “エレキドラム” として使用するのが目的ではない。 持ち運びが楽でコンパクトなスネアドラムが欲しかったのである。
そんなワケで、あっさり取り外してしまった(汗)。 冒頭にも記したとおり標準仕様(ピックアップ無し)の相場価格よりも安価に入手できたわけだから、ピックアップはオマケみたいなものだし。 …とはいってもこのピックアップは別の用途で活用するつもりである(そのことも計算してこれを購入したワケで)。
さて次は、このスネアをどのように活用するか、である。
Posted: 06/20/2010
Last updated: 06/27/2010