愛のあるマスタリング | comino Records
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愛のあるマスタリング

さて、先日観に行った『KC10プレビューライブ』であるが、デジタルレコーダ EDIROL R-09 とコンパクトデジカメ FUJIFILM FinePix F31fd によるネタを元に “勝手にPV” を作成。YouTubeにアップしてみた。
確保した座席がややステージから距離があったため、オープニング部の写真や、ムービーのアングルのバリエーションが少ないが(腕が悪いというハナシもあるが…)、ライブの雰囲気はなんとなく伝わってくるのではないかと思う(映っていないメンバーの方、ゴメンナサイ)。 ムービーの編集は、愛機 iMac Core2Duo に付属している iLife スイートの iMovie というツールを使っている。Apple らしいユーザエクスペリエンスで手軽にそれっぽいムービーが制作出来るし、YouTube へのアップまでメンドウをみてくれるので非常に楽しいアプリケーションである。
ところで、この “勝手にPV” の音は R-09 で録音した音に差し替えてある。いわゆるMA作業と呼ばれる作業であり、自分で言うのもナンだが案外凝っているのである。 音の差し替え作業そのものは iMovie に搭載された機能で比較的簡単に出来るのであるが、問題はその音の処理=マスタリングと呼ばれる処理である。 録音そのものは既述のとおり、EDIROL の R-09 を使用している。こんな感じの機材である。
この機種はプロ・アマチュアを問わず、楽器を演奏している人に人気があり、たいていバンドメンバーの誰かが持っていたりして、ライブ中に録音しているのを見かけることがある。実際、結構良い音で収録できるのである。オモシロいのは、録音される音質は “ハイファイ” ではなく、バンドマンが聴いて気持ちよい “音楽” として収録できるのが特徴なのである。このあたりの味付けはさすが楽器メーカーである。 実際、自分がやっているオヤジバンドの練習を収録しても、非常にいい感じで録音できる。
ただし万能ではない。
今回のような “盛り上がったライヴ” の音源を収録した場合に問題が生じるのである。 まずは、以下の画像を見ていただきたい。
この画像は収録した音源の “波形” を示したものなのだが、橙色の矢印で示した部分 = この線のような “波形”。これは「手拍子」である。当然、R-09で収録している側は客席側である。“盛り上がったライブ” の場合、オーディエンス(含む=自分自身)は盛り上がって手拍子をするのは当然であるし、そうあるベキである。 結果的に音源には手拍子や雄叫びなどが盛大に録音されてしまうのである。
上記の例の場合、上の波形=左側に着席しているお客さんの手拍子が盛大な音量で収録されてしまっているのである。 少々専門的になるが、録音する際には、最大音量を超えない範囲で録音レベルを調整する必要がある。結果的に、手拍子に音量を合わせるしかなく、肝心の音楽は思いのほか小さな音量で収録されてしまうワケなのである。しかも、手拍子はかなり大音量なので耳につく。
プロの音響マンであれば『 コンプレッサー』、『 リミッター』と呼ばれる機材(機能)で上手く調整することが出来るのであろうが、拙者はアマチュア。なかなか思ったようにこれらの機能が使いこなせない(まぁ、何となくは調整できるのだが、あまりきれいな音にはならない)。 そこでいろいろと研究した結果(って、そんなに研究してないけど…)、拙者が使用しているツール= Peak に内蔵されている「Gain Envelope」という機能を使うとかなりキレイに除去できることが判った。
具体的には以下のような方法である。以下の図は、手拍子の部分を “選択” して「Gain Envelope」機能を開いた状態である。橙色の矢印が手拍子である。
ここで以下の図のように、白い線(音量の変化を表す)をマウスで操作してボリューム(音量)に変化をつけるワケである。下の橙色の矢印で示しているように、手拍子の部分だけ音量が最小になるように白い線を調整する。そうすると、上の橙色の矢印に示すように手拍子部分だけがピンポイントで音量が最小になるのである。白い線のカタチが微妙な図形になっているのは音量の変化が不自然にならないような対策である(試聴してみて決定する)。
この処理を全ての “気になる手拍子” に対して適応していくのである。 結果的に、以下に示すように手拍子は適正な音量に調整される。
これにより、“手拍子の分” だけ全体の音量を上げる事ができるので、全体として音量をアップさせることが出来るのである(これをノーマライズという)。結果的に以下のような波形が得られるのである。
こうなると、手拍子は耳につかず、全体としての音量(音圧)が上がるため音源としてはいい感じになるのである。
とまぁ、こんな感じなんですけどね。 なにしろ手拍子ですから。 ええ、そりゃもう全ての手拍子に対して同じような感じで調整していくんだから、かなーり地道で根性のいる作業なんですよ、実際。
専門の人から見たら「なんと原始的な…」なんてことナンだろうし、本当はもっといい方法があるんだろうけど、手間はかかっても結果は良好。 アマチュアリズムを発揮して『愛のあるマスタリング』を行っているワケなんすよ、ってハナシでした。