ジワが、来る | comino Records
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ジワが、来る

ワタクシの地元、浦和では『浦和市民寄席』というものが毎月開催されております。 いわゆる市民寄席としては日本で最も歴史が古く、今回で第402回。 昭和53年(1978年)から続く、市民寄席の名門なんだそうです。 家から近いし、拙者も年に1回くらい足を運びます。
先週の日曜日、久しぶりにその市民寄席に出掛けてきました。 というのも、正月の七福神めぐりや上野の山の桜が散ってから行われる『御葉波会(おはなみかい)』でご一緒させて頂いている、むかし家 今松師匠 が高座に上がるからなのでありんす。 しかも、五街道 雲助師匠 との二人会という通好みな趣向。 さらに今回は、終演後、一緒に呑みましょうってなハナシになっていて、こちらのほうも楽しみだったんですわ。
ええ、今松師匠は国立演芸場花形演芸会金賞を受賞されるほどの実力のあるお方。 ハッキリ言ってかなーり通好みのする粋な師匠なんです。 なので、国立演芸場や末廣亭の高座の後にご一緒することなんて、ワタクシごときドシロウトじゃとーてームリムリ。 普通は落語に造詣が深い取り巻きの通人の方たちとお吞みになるワケです。 『七福神めぐり』や『御葉波会』なんかでご一緒する時は、ぜんぜんそんな様子は感じられないんですが、まぁ、それが粋ってヤツなんでしょうか。
そこへいくってーと今回は市民寄席。 いくら歴史のある名門市民寄席とて、そうそう取り巻きの通人なんかぁ来やしません(っと思う)。 今回は七福神めぐりなんかでもご一緒するSちゃんとご一緒したんですが、彼女は筋金入りの落語好きで今松師匠の追っかけ。 彼女からの情報だと今回は終演後に特に予定はへえってねーってコトだったんで、地の利を生かしつつ「だったら師匠、吞みに行きましょうよ」ってなハナシになったのでした。
会場は午後1時。軽くうどん(そばの方が粋だったな…)を食ってから会場へ。 ま、市民寄席ですからね。 こんな感じの「市民文化センター」で行われています。 ラジカセだけど一番太鼓が響いておりました。
木戸銭払って会場へ。 会場内はこんな感じで高座が設えてあります。 手作り感満載です、いい意味で。
満員御礼。
上の写真の通り座席はパイプ椅子なんですが、最終的にお客さんが入りきれず、膝送りしてなんとかギリギリ入りきったという大盛況でした。
まずは前座の 入船亭 辰じん さんの『鈴ヶ森』。 おなじみの泥棒が出てくるネタですね。 そーいえば、今年の七福神巡りは『東海七福神』でした(品川周辺)。
前座さんに続いていよいよ二人会の始まりです。 まずは 五街道 雲助師匠 が高座へ。 演目は『お化長屋』。 夏らしい怪談話(という括りいいのか?)。 流石です。 場内一気に豪快な笑いに包まれました。 すばらしい。
ここで中入り。
中入りには「お茶とお菓子」が振る舞われたり、地元商店街提供による『寄席くじ』なんてのもあって、アットホームな楽しい感じです。 『寄席くじ』は、前座で登場した辰じんさんの楽しいトークとともに進行して行きます。 こうして芸が磨かれていくんですなぁ(ほんとか?)。 お茶を振る舞ったり『寄席くじ』の景品を配るのは地元埼玉大学・落研のボランティアの方々。 その代わりロハで口演を観る事ができるようです。
さて中入り後は、本日のトリ。 出囃子とともに今松師匠が高座へ。 演目は『蓮台奇縁』。 初めて聞く噺でした。
無粋を承知で身も蓋も無い説明をしちゃえば「大井川の渡しで川止めにあった時のハナシ」というコトになるのですが…… 特に笑いをとる部分はありません。といっても人情噺ってわけでもない。 とにかく淡々と昔話をする宿の主人の噺が約1時間弱続くだけ。 これといった落ちがあるわけでもない。 しかし引き込まれてしまう。 こりゃ通好み過ぎます。 場内、大喝采で今松師匠の高座は終了したのでした。

高座が終わったのが午後4時過ぎ。
しばし師匠の帰り支度が終わるまで楽屋近くで待っていると、ほどなく師匠がお目見え。 さて、吞みに行きましょうか、ってハナシになったのですが、傍らにいらした見るからに通人風のご年配の方がお二人参加されるとの事。
「いいよね?」って、そりゃ全然問題ないですよ。
緊張!!
実は比較的カジュアルな感じの飲み屋に行こうかと思っていたのですが、一気に方向転換。 急遽、同行のSちゃんの意見も踏まえて、少々渋めのお店に変更しました。でも、4時からやってるかなぁ?
「ちょっと先に行って見てきますね!」っとばかり、舎弟モードで目的の飲み屋の様子を偵察に。 幸い既にのれんは出ていて、席も十分確保できるとのこと。ホッ…。
そんなワケで(予想通り、いやそれ以上に)通人のお二人を交えて宴が始まりました。

正直、最初は緊張していたのですが、お二人とも非常に気さくな粋人の方で、普通は聴けないような裏話も含めて楽しいハナシを聴かせていただきました。
本日、師匠の根多である『蓮台奇縁』。 初めての噺だったし、内容的にも初めての感覚。 ご一緒した通人のTさんに、酔った勢いで正直に意見を言ってみると…
「そうですか、聞き入ってしまいましたか。それを “ジワがくる” と言うんですよ」と教えていただきました。タイヘン勉強になります。
終いには映画やJAZZなどの音楽の話まで発展して、ほんとうに楽しいひとときを過ごしました。
4時から吞んでいたってーのもありますが、前半ちょっと(いや、かなり)緊張していたのと、楽しい宴で思いのほか酔ってしまったのは言うまでもありません。